ジャズ通の“Dr.NAKAJIMA”が選んだ不滅のジャズ名盤ベスト28

星の数ほどあるジャズアルバム。何をもって名盤とするかは勿論人それぞれなのだが、今回はあえて5つのテーマの中で「これがベスト・オブ・ベストだ」というお薦めのアルバムを、私なりに選んでみた。勿論、賛否両論は承知の上だが、深くジャズを聴き込んだ耳が、改めてアルバムを聴き直して選んだ名盤、是非聴いてみて欲しい。今更アルバムの説明も不要と思い、あえて省略させていただいた。

☆50年代の名盤BEST5

スウィングに代わり、ビ・バップ、ハード・バップが時代を席巻し始めた1950年代は、ジャズ・ジャイアンツたちがあちこちのクラブで熱いライブを繰り広げた華やかな時代。そんな50年代に録音されたアルバムから選んだベスト5は、――。
1位 KIND OF BLUE/MILES DAVIS
2位 SAXOPHON COLOSSUS/SONNY ROLLINES
3位 CLIFFORD BROWN&MAX ROACH/CLIFFORD BROWN&MAX ROACH
3位 PORTRAIT IN JAZZ/BILL EVANS TRIO
5位 THE GENIOUS OF BUD POWELL/BUD POWELL
5位 GIANT STEPS/JOHN COLTRANE
 50年代は珠玉の名盤が目白押しで、その中からベスト5を選ぶのは考えれば考えるほど至難の技であり、困難極まりない。今回私の場合、夢中で聴いていた時代のアルバムなので、愛聴盤を基準にした。いつの時代のベストランキングをみても、ほぼ常連の名盤で間違いはない。残念ながらランクイン出来なかったアート・ブレイキーホレス・シルバージャッキー・マクリーン、リー・コリッツ、そして誰もが聴いたウエスト・コースト・ジャズのアート・ペッパージェリー・マリガンチェット・ベイカー、それに50年代末オーネット・コールマンらの新しい波は、後々のジャズ・シーンを考えると忘れることは出来ない。

☆60年代の名盤BEST5

モード・ジャズ(新主流派)の時代、到来。更に、ジャズはニュー・ジャズ、フリー・ジャズを生み出しながら、多彩な才能を世に送り出してゆく。60年代に録音された名盤のうちのベスト・オブ・ベストは――。
1位 WALTS FOR DEBBY/BILL EVANS TRIO
2位 MAIDEN VOYAGE/HERBIE HANCOCK
2位 A LOVE SUPREME/JOHN COLTRANE
4位 MILES SMILES/MILES DAVIS
5位 NEFERTITI/MILES DAVIS
5位 COLTRANE LIVE AT BIRDLAND/JHON COLTRANE 
個人の好みが反映された結果なので、これをもってひとつの指針になるとは思えないが、それでも順位は別にして、上位の5作は妥当なところではないだろうか。どれが1位でもおかしくない。まあ、ジャズなんてそんなもの。行きつくところは個人の好みである。

☆日本ジャズの名盤BEST5

海外ばかりでなく、もちろん日本でも多くの才能が生まれ、熱いサウンドを聴かせてくれた。
渡辺貞夫山下洋輔秋吉敏子、菊池雅章・・・――。それぞれが日本ジャズの歴史そのものだ。
1位 SUSTO/菊池雅章
2位 PALLADIUM/佐藤允彦トリオ
3位 JAZZ&BOSSA/渡辺貞夫クインテット
4位 AFTER HOURS 2/菊池雅章
5位 MOBO渡辺香津美
こればかりは選ぶのに基準が難しく、苦労したが、やはり私が若かりし頃からの愛聴盤を基準にした。日本ジャズも再度改めて聴けばジャズの長い歴史と個性豊かなミュージシャン達の幅広さを理解できそうだ。


☆未来を感じさせる“今”の名盤BEST5

現在、ジャズ・シーンを牽引する若きアーティストたちが続々と登場してきている。
人気のヨーロッパ・ジャズは勿論、日本の才能にも注目したい。
1位 FIVE FOR FUN/HIGH FIVE
2位 BEYOND STANDARD/上原ひろみ
3位 THE WAY UP/PAT METHENY
4位 QUARTET/PAT METHENY&BRAD MEHLDAU
5位 THUNDERBIRD/CASSANDRA WILSON
 どの作品に未来を感じるかには、当然の事ながら個人差はあると思う。ファブリッツィオ・ボッソ(tp)を中心とした若手イタリアン・クインテットハイ・ファイブの新作『ファイブ・フォー・ファン』は、ハード・バップの現在形として主流派ジャズを体現する代表的な1枚。上原ひろみは日本人ジャズの歴史を軽々と塗り替えてしまった事実が事件だった。『ビヨンド・スタンダード』は既成の有名曲を再構築する手腕が新鮮極まりない。

☆ジャズ・ヴォーカルの名盤BEST5

人それぞれの好みが一番わかれるのが、ヴォーカルものだろうか。が、やはり歴代ディーパの存在感は大きい。現在の若手も含めて選んでみた。
1位 奇妙な果実/BILLY HOLIDAY
1位 MACK THE KNIFE/ELLA FITZGERALD
3位 TRAVELING MILES/CASSANDRA WILSON
3位 SARAH VAUGHAN WITH CLIFORD BROWN/SARAH VAUGHAN
5位 SATCHMO SERENADES/LOUIS ARMSTRONG
5位 UNFORGETTABLE/NAT KING COLE
 アルバムに順位をつけるというのは、もともと「評価」と「好み」の妥協で生まれるもの。それだけに選択者の「好み」がナマで出やすいという事だろう。私のラインアップ次第で結果がどう変わるか、4,5年後にもう一度やってみても果たして同じ答えが出るだろうか。ついそんな事を考えてしまう。

―完―