オリジナル・フォーマットかボーナス・トラックか!?そんな悩みもジャズファンならでは

 先日あるカルチャーセンターの講義で『サキソフォン・コロッサス』を紹介した。
「何か質問は?」と言うと、年配の方が、「これは最初からCDだったのですか?」と尋ねられた。笑ってはいけない。一般の音楽ファンはアナログとCDの区別や、オリジナル盤などに関心はない。
 そこで「今更聞けない」CDの買い方、基本編を伝授しよう。『サキソフォン・コロッサス』を例に挙げれば、このアルバムは1956年にアメリカの「プレステッジ」という会社によって録音された。形態は30センチLPで、昔懐かしい黒色ビニール円盤、いわゆるアナログ盤というもの。
 この時最初にプレスされたものを「オリジナル盤」と称し、今では希少価値からプレミアが付いて、ジャケットの保存状態の良いものなら20万円を越える価格が付く事も珍しくない。こうしたものは当然アメリカ本国でしか発売されておらず、日本で購入するには、録音当時なら「輸入盤」という形をとるし、現在はいわゆる中古盤専門店に行かなければ手に入れることは出来ない。
 勿論私達はそんな面倒な事をする必要は無く、CDで再発された輸入盤や、日本のレコード会社の発売する日本盤CDを購入すればよい。問題はどれを買うかだ。
 日本盤は日本語解説(ライナーノート)が付いているけれど割高で、音質も輸入盤とは違うようだ。そこで最近は紙ジャケット仕様やボーナス・トラック付き等、あの手この手でファンの購入意欲をそそろうとする。私個人的にはプロデューサーの意向を反映したオリジナル・フォーマットを尊重したいが、別テイクの魅力も捨てがたい。そこで迷うのもマニアの楽しみの一つと割り切るしかない。
 過去作品の再発であれ、新規に録音されたものであれ、出たばかりのものは一応「新譜」というくくりになり、いわゆる大型CDショップ、「タワー・レコード」や「ヴァージン・メガストア」に行けば大体購入が可能だ。但しヨーロッパ盤など輸入ルートの限られるものは、「ディスク・ユニオン」等のジャズ専門ショップに行かなければ入手出来ない事もある。
 こうした専門店は、ジャズ中古盤(アナログ、CD共)の買取もしていて、それらが妥当な値段で販売されているので、盤質劣化の心配のないCDはどんどん買うと良いでしょう。聴く耳をもっていないと思しき連中の放出した好アルバムを格安で入手した時の快感は、ジャズ・ファンならではの特権だ。とはいえ、最近は大型レンタルCDショップのジャズコーナーにも相当名盤が沢山並んでいるし、個人的にコピーする場合は少々手間が要るが超安価で収集出来るのでお勧めだ。
 最後に「廃盤」を説明しよう。版権の関係や知名度の低さのため、再発されていないものを廃盤といい、内容の良いものにはそれなりの値段がついている。これも中古盤専門店で入手できるが、原盤制作会社の倒産やレコード会社の怠慢等の理由で出ないものを除き、「希少価値しかないものもある」という事は頭に入れておく必要はある。